『拍手オマケ小説不健全サイド』 「栄先輩、ゼリー浣腸しません?」 「・・・・・・・・・・・・は?」 たっぷり間を空けて聞き返してきた腕の中の恋人に、三角はもう一度きっぱりと言い放つ。 「だから、ゼリー浣腸。表現的にはNGかと思って今まで描写はなかったけど、俺らいつもシャワー洗腸みたいな軽いのしかやってないじゃないですか。せっかくの拍手オマケだし、サービスってことで普段より濃いことしましょうよ」 「んなコアな連中しか喜ばないようなサービスがあるか! 死ね! 百篇死ね!」 聞き間違いを望んでいたのにそれが裏切られ、栄一は三角の顔を割と本気で殴りベッドから叩き出した。床で何か言う顔に読んでいたファッション誌も投げつけ、更に踏みつける。 そんな態度も可愛くて堪らない三角には、怒られても怒鳴られても嬉しいだけで。にっこり笑い、ベッドの上に両手を付いた。 「じゃあさ、他にどんなサービスがあるんです? 俺らって、作者が友人に言われて凹んだくらい、エロいセックスばかりしてるんですよ。もう結構ヤリ尽くしてるじゃないですか」 「だ、だったら普段の生活風景とか・・・」 「そんなつまらない。それに、普段もセックスばかりしてますが」 「ぶ、部活だって・・・」 「先輩はもう引退しちゃってるし、作者はバスケの知識殆どないですよ」 「じゃ、じゃあ・・・」 「もう諦めてください」 足は床に付けたまま栄一を引き寄せ、その体勢が崩れるのを利用してベッドの上で簡単に組み敷いた。 慌てる栄一の目前に、ビニルのパックに入ったどろりとした液体を晒す。 「ほら、見て。ピンク色で奇麗でしょ。初めてだから、後片付けが楽なタイプにしたんですよ。匂いも大分抑えられるし・・・」 「そういう問題かっ」 じたばた暴れ出した栄一の腹に乗り、三角は顔を近付けた。 「大人しくしてください。ね?」 間近でそう言い、濃いキスで気を逸らせた。口腔の性感帯を嬲られぽやっとなった栄一の意識は、ガチャンという硬い音ではっきりする。 「な、てめ・・・三角」 「渓夜です、栄先輩。全部入ったら外してあげますから」 くすっと笑い、手錠の鍵をシャツの胸ポケットに入れた。 無駄だと分かっていても、栄一は頭上で留められた手を動かさずにがいられない。ガチャガチャと抵抗する様を見て、三角が笑う。 「じゃ、やりましょうか」 栄一の背中に、嫌な感じの汗が流れた。 「えーとなになに? 注入前にまずよく慣らしましょう。ですって栄先輩。足開いてください」 ベッドに固定され、下半身だけ裸に剥かれた栄一は、頑なに顔を背け足もぴっちりと閉じている。その無言の拒絶が嗜虐心を煽って、三角は嬉しそうに笑う。 「可愛いなあ、栄先輩。好きですよ」 「好きなら止めてくれ」 「好きだからやりたいんです。はい、開いて」 膝を掴まれ、抵抗も空しく簡単に足を開かされてしまった。悔しさに唇を咬む栄一の露になったそこに、ボタボタとローションが垂らされる。冷たさに、身が縮む。 「萎えきってますねえ。盛り上がりませんか?」 「盛り上がるか、ボケ!」 「・・・あんま酷いこと言わないでくださいよ。酷いこと、したくなるでしょう?」 すっと目を細められて、栄一は息を飲んだ。三角は今でも、自分の思い通りのことが進まないとどこまでも酷薄になる。分かっているから、栄一は観念して力を抜いた。 その隙をついて一度に二本もの指を突き立てられ、栄一は全身を強張らせた。ローションのぬめりがあるとはいえ中はまださほど湿っていない。無理な挿入で肉壁は摩擦で熱くなり、その焼けるような痛みに栄一の躯はビクビクと震えた。 「・・・ば、ばかやろ・・・」 目をきつく閉じ、歯を食いしばって栄一はその責め苦に耐えた。その苦痛に歪んだ顔を恍惚の笑みで眺めながら、三角は挿した指をぐねぐねと動かす。動かした隙間からローションが馴染み動きがよくなると、栄一の性器は如実に反応を見せ始めた。芯を持ち、熱くなってくる。 「栄先輩、大分慣れましたよね・・・いやらしい躯で、俺は嬉しいですが」 「んっん、ばかなこと、言ってんじゃ・・・」 三角によって散々突かれ敏感になった場所を揉まれ、栄一は息を飲んでその身を捩った。先端からは押される度に先走りが溢れ、ローションと混じり後孔までドロドロと流れていく。それが空気を取り込みながら出し入れする指に掻きまわされるから、耳を塞ぎたくなるような淫猥な音に栄一は羞恥で消えたくなった。 「ね、栄先輩。もう三本ですよ? エロいなあ」 ぐちゃぐちゃと広げられたり回されたり、もう随分と深いところまで男を覚えさせられた栄一には物足りない刺激で、小刻みになった浅い呼吸の途中で三角に懇願する。 「も、やだ・・・早く入れ、」 「勿体ないお誘いですが、俺のはあと。しっかり、全部、飲み込んでくださいね」 その言葉で頭は冷水を浴びせかけられたように突然はっきりし、栄一は腰を引くようにして逃げようとした。しかしそれも空しく、足を押さえられキャップの開けられた注入口を挿されてしまった。 「じゃ、いきますよ」 パックを握る三角の手に、力が込められた。 ずるずると嫌な感触のものが中を逆流するのは、想像以上に気味が悪く、そして吐き気を催すようなものだった。比べるなら、中に出されたものが重力に倣って下まで流れてくるほうが全然ましだ。微妙に温められたゼリーは直腸内を進み、腹に溜まるような錯覚を起こしながら次々と体内に満ちていく。 苦しくて、気持ち悪くて泣いているのに、三角はやめてくれない。ブルブルと痙攣しながら、その責め苦が過ぎることだけをただ待ち焦がれた。 「・・・はい、全部入りましたよ」 言いながらプラグを取り出し、パックと交換にそれを挿す。湧いてきた強烈な腹痛がそれにより逃げ場を失い、硬直する栄一を苦しめた。 「う・・・ぅあ、」 震えながら膝を折りなんとか痛みを逸らそうとするが、その所為で逆に内容物が降りてくる気がして、栄一は泣きそうな顔でベッドに崩れ落ちた。 「早く、取れよ・・・」 「ああ、そうでした」 何をボケっとしていたのか、三角は今思い出したかのように鍵を取り出して手錠を外した。解放された瞬間栄一はトイレに向かおうとしたが、手を引かれ再びベッドに倒される。何事かと睨み付けると、三角は眉を下げ申し訳なさそうな顔になって。 「これ、少なくともあと五分は我慢しなきゃいけないんですって。ごめんなさい」 謝っているが、口調はどこか楽しげだ。 「くそ野郎・・・!」 「まあそう言わないで。気逸らしてあげますから」 宥めるようなキスを額に落とすと、三角は栄一のシャツを脱がせながら下腹へ顔を寄せた。そして痛みやら吐き気やらですっかり萎縮した性器を、その口にぱくりと含んだのだ。 「やめ・・・っ」 せり上がる苦痛と相反す快感が一気に全身を駆け抜け、栄一は足を引きつらせた。ガクガクと顎を揺らし、強すぎる悦楽に身悶える。 「あっあっあ、やだ、変になる・・・」 抵抗したいが、プラグが抜けるのではという不安に髪を引くげらいしかできない。その間も三角は震える性器の裏側やくぼみを刺激し、的確に追い詰めていく。中から外から責められ、栄一は息も絶え絶えだ。 「も、もうらめ・・・イっちゃ、」 「いいですよ。イってください」 「ん、ふぅ・・・・・・っ!」 先端をちろちろと舐めながら言われ、唇に挟まれ下まで扱き下ろされる。同時にプラグを強く押し込まれ、栄一は我慢も効かず三角の口内へと溜まっていた熱を吐き出した。ビクビクと、快感の余韻で喉が痙攣している。 「は、あ・・・」 色々な感覚がせめぎ合い震える栄一の額を、三角は口の中のものを嚥下しながら愛おしげに撫で付けた。 何度も抵抗し抗議したのに、結局栄一は浴室で足を開かれ排泄することとなった。呆然としたままシャワーで清められ、いつものように洗腸されるのも他人事のように眺めていた。 毛足の長いバスタオルで躯を拭かれていた時になり漸く頭が機能を始め、栄一は目の前の男を強く殴るとベッドに走り毛布に包まって丸くなってしまった。 そこからは三角が何を言っても出ては来ず、返事もない。とうとう音を上げた三角が土下座までして謝ったのに、毛布の隙間から冷ややかに見るだけで出てこようとはしなかった。かなりへそを曲げられてしまったのだと閉口し、三角が肩を竦める。 「ほんとごめんなさい。そんなに怒るとは・・・思ってたんですけど」 頭を下げながらも時々にやにやする三角は、丸まった塊にのしかかり背中や脇腹をなぞった。布越しの愛撫に栄一が身を浮かした隙に、毛布の横から手を差し込む。 「俺、色んな方法で栄先輩をよくしてあげたいんですよ」 感触だけで太股を探り当て、円を描くように撫でながらその手を双丘へと滑らせる。後孔を指で見つけると、栄一が拒む動きをしたのも無視し親指で強く押した。 「ヒッ・・・」 「ね、分かります? ここ、少し腫れてるんですよ」 ぐにぐにと押されるだけで、散々イカされた後のそれに似た快感が湧きあがる。しかし声を上げるのは悔しくて、毛布を手繰っている腕を咬むと栄一は首を振った。 「分からない? じゃあ教えてあげます。薬で促された排泄は、栓などで抑制され続けると、中の筋肉が常に動くようになるんですよ。今もこうして俺の指に吸い付いて・・・欲しいんじゃないですか?」 皺を伸ばすように指をゆっくり動かされて、切ない疼きに栄一は腕を咬む力を強くした。ブルブルと震えながら、どうあっても声を出さないように意地を張っているようだ。 「・・・もう。いい加減機嫌直してくださいよ。そんなに辛かったんですか?」 それとも。 三角は指を離し、耳のありそうな場所に口を寄せて囁いた。 「そんなに、感じちゃったのが恥ずかしい?」 言い終わるか否かというところで栄一は三角を跳ね除けて起き上がり、驚いた三角はベッドの上を少し退いた。その顔に枕を投げたが当たらず、栄一は癇癪を起こして殴りかかろうとした。それを空中で止め、無理に引いて抱きすくめる。 「図星ですか? あはは、可愛いなあ」 「うっせーばか! お前なんか、嫌いだ・・・!」 「俺は好きですよ」 どん、と胸を叩かれるが、三角は背中を優しくさするだけで。次第に興奮の冷めてきた栄一は、大人しく腕の中に収まり鼻を小さく鳴らした。 「も、二度とやんなよな・・・」 「・・・はい、善処します」 「徹底しろ!」 怒っているが、口調はただすねているだけのものに変わっている。最後まで怒りきれない恋人が愛しくて、三角は肩に乗る頭を抱いてうなじの辺りにキスをした。 「好きですよ。好きだから、なんでもしてみたくなるんです」 だから許して、とは言わなかったが、腕の中で栄一は小さく頷いた。 終。 080714 |