※一応注意※
この話は動物を使って色々します。そういうの許せないんだけど! って人は読まないでね☆


sweet cat.

 料理がある程度のレベルまでできるようになると、人によってはスウィーツ、つまりお菓子作りにも手を伸ばす人も出てくる。
 葛井もどうやらそのタイプだったようで、最近の舟木家はバターや砂糖の甘ったるい匂いに包まれることとなった。
 葛井が楽しそうにキッチンで動き回り、それをソファに寝転がった舟木がぼんやりと眺めている。とらはというとバターのおこぼれを貰ったり、舟木の近くで寝たりと様々だが、ここ何日かはそんな生活が続いていた。
 甘いものは嫌いなわけでもないし、葛井が楽しそうにしているのは見ていて悪いものじゃない。
 舟木が思っているのはただ一つ、恋人の営みができないことだ。
 傷が全快して舟木が風俗店の店長に復帰してすぐ、葛井はそこの雑務として働くようになった。
 負担を減らしたいというのが表向きの理由。実際は一人でいたくなかったから。
 二人の関係は特に公表していないが、二人とも周りをはばからずに甘い空気を出しまくっているので、ぶっちゃけバレバレだったりする。
 ともあれ一日中一緒にいることが可能となったわけだが、働き慣れていない葛井は帰るとすぐ寝てしまうので、夜にすることはままならない。じゃあ昼間からとにやけているのに葛井にその気はなくて。
 舟木の欲求不満は、募るばかりなのだ。
「でーきた! 大河さん、見て見て」
 焼けたばかりのスコーンを持って嬉しそうに笑う恋人を見て、可愛いと思う反面苛立ちもする。なぜ自分が我慢しなければならないのか。ひきつる笑いを浮かべながら、黄金色のそれを口にした。バターの香りが漏れ、とらが目を覚まして鼻をひくつかせる。
「あ、これはダメだよ、とら。バターならあげるから」
「・・・太るんじゃないのか? いい加減」
「少しなら平気だと思うけど」
 ついでにお菓子作りもやめろと言いたかったのだが。溜め息を吐いて、キッチンに戻る葛井を目で追う。
 指先に乗せたバターを猫の口元に寄せる。ちらちらと赤い舌がそれを舐め取るのを見て、舟木はにやりとした。いっそ与えまくってみてはどうか。葛井がバターなどもう見たくないと思うぐらいに。
「おい、クズ。ちょっと来い」
「・・・何?」
 呼び方に少々不満があるのか唇を尖らせたが、葛井はのこのこと寄ってきた。バターの乗った皿を持っているので、とらもついてくる。
「座りな」
 ソファの端にゆったりと背中を付け、足を曲げる。その間に葛井が向かい合うように座り、目を合わせてきた。
 その目が何かを訊いてくるより先に肩を押し込み、膝の裏を引き寄せて仰向けにさせた。ぱちくりするのを無視して、その手からバターを奪い取る。
「な、何? なんなの?」
「とら、おいで」
 呼ぶと、ひらりと飛んで葛井の腹に乗った。軽い踏み心地にくすぐったいと笑う葛井の服をたくし上げ、へその辺りに塗る。素早く気付いて、とらがそれに近寄った。
「ええ? ちょ、くすぐった・・・あはは」
 まだ緊張を持っていない葛井の腹に指を付け、ぬるぬるとバターの筋を付けた。時折増やしながら上まで昇っていき、胸の中心へと辿り着く。そこで漸く葛井の顔に変化が出て、舟木は口角を上げた。
「とらがビビるから、暴れるなよ?」
 どろりと溶かしたバターを塗りこまれ、その感覚に腰が浮いた。その所為で、くすぐったいだけだった腹の刺激に違うものが混ざり出し、除々に上がってくるのをドキドキと見つめた。
 ざりざりと柔らかいとげのある舌が胸の筋肉に触れる。あと少し、あと少しでそこに到達してしまう。知らず息の荒くなる葛井の腰が、びくりと跳ねた。
「ぁあ! や! とら、だめぇ・・・っ」
 振り落としたいが、舟木が足まで使って押さえている所為でできなかった。骨に付いた肉を削ぎ落とすための舌が、べろべろとそこばかりを舐める。熱くがちがちになったところでバターを足す指に優しく擦られ、その繰り返しに頭がおかしくなりそうだ。責められているのは胸だけなのに、腰の中心に熱が集まっていく。
「くく・・・デカくなってきたぞ。苦しいんじゃないのか?」
 焦らすように片手でじっくりとホックを外され、葛井は手で顔を覆った。恥ずかしすぎて、頭がおかしくなりそう。
「んん? 猫に乳首舐められて気持ちいいのか? もうこんなにぬるつかせて、やらしい奴」
 笑いを含みながらの実況に、腰ががくがく揺れた。布の上からぬめりを指で伸ばされ、息が上がる。下着ごとズボンを脱がされるのを、指の間から見た。
「ほら、こっちへおいで」
 まだ胸に執着していたとらを引き剥がし、片手で抱いてバターを指で掬い上げた。怯え、しかしどこか期待を含んで見上げてくる葛井を見下ろして、楽しそうに笑う。
 開かされた足の、その中心。痛そうなほど上を向いた性器の竿部分に、大量のバターを塗り付けた。葛井が、何かを言いたそうに首を振った。
「カリ以外なら衛生的にも問題ないだろ。・・・しっかり啼いてくれよ?」
「たい、」
 かろうじて出した声も無視され、小さな獣が股の間に置かれた。首を痛いほど持ち上げて見つめる葛井の上で、小さくにゃあと鳴く。
「とら・・・だ、め・・・っあ!」
 反射的に腰が浮きそうになるのを、舟木が太股をしっかり掴んで押さえた。その所為で快感を散らすことが叶わず、葛井は顔を手で覆った。
「・・・た、大河さん・・・っやだぁ・・・」
「がちがちにしておいてまだ言うか。もうバターだか先走りだか分かんねぇぞ」
 とらの舌が竿から会陰に降り、皮一枚隔てたところからの前立腺刺激に葛井が鳴いた。その声を恍惚として聞きながら、亀頭の割れ目をぬるぬると弄る。葛井の喉から嗚咽のような喘ぎが漏れ、舟木を満足させた。
「たひ、たいがさぁん・・・っ」
 バターを舐めるのに飽きたのか、とらはあくびをひとつして床に降りた。最近お気に入りのベッドである、クローゼットの上にでも向かったのだろう。
 葛井の性器を弄りながらそれを見送り、上気しきった顔を覗き込む。
「いれ、いれて・・・イカせて、よ」
 はふはふと口を動かし、物欲しそうに爪を咬む。もう限界なのは目に見えていたが、舟木はわざと聞こえないふりをした。手を離し、真っ赤になって自己主張する胸の突起を摘み上げる。
「ひや! や、った、たいがさ・・・っそこ、やめてぇ・・・」
「指じゃ痛いか? ん?」
「ふぅ・・・っ」
 からかう口調に葛井は必死に頷き、力の入らない手を舟木の腕に添えた。
「可愛いぜ、巳春。どんな菓子よりも、お前が一番美味そうだ」
 背中に手を回して膝立ちにさせ、油脂でてかった乳首に吸いついた。浮き出た肩甲骨や背骨をなぞりながら、片手は尻肉の間をまさぐった。
「ぬるぬるだな、おい」
「それ、は・・・バターがっ」
 言いながら舟木の頭を抱き寄せ、指を受け入れやすいよう片足を少し上げた。ぬめりを伸ばすようにして遊んでいた指が一気に二本差し込まれ、葛井は唇を咬んだ。
「んん! んーっ」
 とくんと精液が舟木のシャツに飛び、葛井はくたりと肩にしなだれかかった。その肩に顎を乗せ、舟木が嘲笑する。
「まだ力尽きるには早いぜ、おい」
 内壁を指で挟みながらピストンし、空いた手でファスナーを下ろした。既に怒張しているそれを取り出し、指を交換する形で深く挿し貫く。首を反らして、シャツの背を強く握り込む。
「あぁ! あ、あつ・・・いい、よぉ・・・っ」
「イったばかりのくせにぎゅうぎゅう締めやがって。ちぎる気か」
 笑いながら腰を掴んで揺すり、葛井を鳴くままにさせる。がくんがくんと頭を揺らしながら喘ぐその体は、幾度となく絶頂を迎えているようだった。自らも腰を振り、与えられる刺激の全てを受けようとする。
「ああっん、ん、やっあぁっあっあっあ! すご、凄くいい、いいっよぉ・・・!」
 久々の葛井の嬌態に舟木が息を飲む。
「この・・・淫乱猫が」
「やああぁぁ!」
 ぐりぐりと奥を亀頭でこね、葛井が締め付けたのを機に大量の精液を注ぎ込んだ。その熱さと余韻を味わうように葛井の内部が収縮し、舌打ちする。
「まだ足りないか? おい」
「・・・っと、もっとぐりぐりって、して」
 溶け崩れた顔でねだる葛井の尻を両手で揉み、そこから白いものが溢れてくるのを楽しむ。その喪失感に睫毛を震わせる葛井にキスしてやり、結合部をなぞった。
「ったく、エロく成長しやがって」
 少し腰を浮かすようにして浅く突き、葛井を悦ばせた。
「エロいの、いや・・・?」
「ばぁか」
 肩口に顔をすり寄せながら体をぺちりと叩き、その頭に頬を寄せた。
「俺がここまでにしてやったんだろうが。バカなこと言ってないで、もっと啼いてろ」
 体勢を変えて、葛井をソファに押し付けた。
「大河、さん」
「まあ頼まれなくても一週間分はたっぷり種付けしてやるよ。嬉しいだろ?」
「・・・え。えぇ?」
 舟木が口角を上げ、我に還った葛井の両足を高く上げた。


 その日は使い物にならなくなった葛井を置いて舟木一人で出勤し、帰ってきても同じベッドで寝させなかった。こりゃ相当怒らせたなと舟木は思ったが、我慢させたお前が悪いということでプチ冷戦状態と相成った。
 それでも日々の食事は作らなければならない。いつものように注文したものを持った菅がやってきて、悪い空気に首を傾いだ。
「どうかしたんですか?」
「なんでもない」
 箱を中に持ってきてもらいながら葛井は頬を膨らませ、あからさまに舟木の顔から顔を背けた。
 菅は不思議そうにしていたが、まあいいかと注文を並べていった。それを確認しながらしまっていく葛井に、そういえばと声をかける。
「今日はバターいらなかったんですか? 最近はいつもあったのに・・・」
 ごとんごとんと、葛井の手からものが落ちた。驚いて見た菅の目に、真っ赤になって冷蔵庫に顔を伏せる葛井の姿があった。
「・・・? やっぱり何かあったんですか?」
 葛井を指しながら舟木の方を見ると、そっちはそっちで最近の寝床であるソファの上で声を殺して笑っている。その顔に、葛井が油揚げを投げた。それをきっかけに舟木は声を上げて笑い出し、葛井は悔しそうに俯いた。
 菅だけが何も分からず、何度も首を傾げていた。





終わっとけ。
08.06.17