『流れゆく時の中で』


 呼び声が聞こえる。耳ではなく、心に直接響くように。
 生まれたときから、ずっと聞いていたような気がするその声は、今では前よりも近くから聞こえる。
 甘く、こそばゆいような、そんな切なさを含有して。


「ラズ! おーい、ラズー?」
 耳に飛び込む声に、ラズはぱちりと目を開けた。木漏れ日が目に入り、瞼を擦りながら周りを見渡す。
 そうだ、今日は天気がいいからと見回りにかこつけて昼寝をしていたのだ。この辺りでは、一番大きな木の上で伸びをして、首を鳴らす。思っていた以上に長居してしまったらしい。軽い足取りで上まで登ると、声の主を捜して指で輪を作った。
 さして苦労もせずに見つけた青年は、二人の住む城の周辺でうろうろしていた。その傍らに黒い影を見つけ、ざわりと毛が逆立つ。枝を一蹴りして、ラズはそのまま数10メートルはある高さから空中へと踊り出した。普通なら一瞬で地面に叩き付けられるところだが、ラズの体は重力を無視して浮き上がった。バサリ、大きな羽音を立てて。
 背格好や顔つきはその辺の高校生のようだが、ラズは人間ではない。
 アメジストの瞳と、濡れたようにしっとりとした闇色の髪。そして背中には大きな黒い翼を持つ、端的に言えば悪魔という存在だ。この近くにある真夜村という小さな集落を護る一族の次期当主である。
 一度の羽ばたきで大きく前進し、二度目の羽ばたきで風を纏いながら城の傍まで近付いた。そして未だに自分の名前を呼んでいる青年の背後に降り立つと、そのまま抱いてから再び上昇した。腕の中で固まる男が状況を理解し、振り向こうと首を捩る。
「ラズ? お前、いきなり持ち上げんなって・・・」
「リューこそ、一人で出ないでって言ったでしょ! あいつ誰?!」
 リューこと瀬能琉太は、目を丸くしてラズを窺った。そしてあいつと呼ばれた黒い影を見下ろし、首を傾げる。
「誰って・・・ラズの知り合いじゃないのか? そう言ってたから、呼んだんだけど」
「え?」
 子どもにするような口調で問われ、ラズは一度冷静になってから下を見た。あっと声を上げ、バツの悪そうな顔をする。
「ごめん、早とちった」
 遥か下から、黒い獣が視線を送ってくる。犬にしては大きすぎる、しかし犬としか形容できない、そんな獣。
「あれ、誰? 何度訊いても名前だけは教えてくれなくてさ」
「俺も知らない。ていうか、まだ名前がないって言ったほうが正しいかな」
「・・・どゆこと?」
 訝しむリューを抱き直し、ラズはゆっくりと高度を下げた。
「ちょっと事情があってさ。詳しいことは後で説明するよ」
 地面に降ろすと、リューは漸く一心地ついたと言うように溜め息をついた。
 実のところ、リューは空を飛ぶのが余り好きではない。元々苦手だったようだが、一度飛んでいる最中にラズが落下したのがトラウマになっているようだった。
 あれは特殊な事例だから、もう二度とないとは思うのだが。しかし、頭では分かっていても難しいようだった。
「そんじゃあ何か持ってくるかな。あいつもケーキ喰えんの?」
「うん、好きだと思うよ」
 基本的に悪魔は甘いものが好きだ。あれも似たようなものだから、恐らく好んで食べるだろう。
 そう答えると、リューは嬉しそうに笑って城に向かった。自分の作ったものを食べてもらえるのが好きだと言っていたので、楽しいのだろう。あるいは、ラズと知人との再会を、邪魔しないようにと思っているのかもしれない。
 城に入るのを見送ってから、ラズは振り向いて懐かしい友人の元へと駆けた。
「久し振り! 元気だった?」
『まあな。・・・あれが例の嫁か?』
「あ、分かる? 美人でしょ」
 にっこりと笑うと、獣は呆れたように鼻を鳴らした。
『外見で判断した訳じゃない。普通の人間なら、まず俺と会話はできないだろ』
 言われて、ああと頷いた。いつも自然に会話しているので忘れがちだが、この獣の声はただの唸り声にしか聞こえない。ただの人間なんかに、聞き分けようがなかった。
 リューはただの人間ではない。というか、ただの人間ではなくなった、と言ったほうが正しい。
 あの体内には、ラズの血液が半分ほど流れている。命に関わる傷を負った際、代謝を変えるためにとラズが無理やり飲ませたのだ。あと数年もすれば完全に入れ替わるだろうが、もう元に戻ることはない。リューは人間でありながら、ヒトとしての時間軸から外れてしまっていた。
『それに、血だけじゃないだろう。あれは元々結構力のある人間じゃないのか?』
「分かる?」
『匂いが違うからな。いい嫁を見つけたじゃないか』
「・・・別に、それが理由でリューに決めたわけじゃないから」
 口を尖らせると、獣は空気の漏れるような気味の悪い音を立てて笑った。
『そんなこと分かってるさ。いくら美味くても、人間を嫁にしようなんて奴ぁ、気狂いか相当の変態だよ』
「お前だってそうじゃないか」
 思わず返してしまった言葉に、獣は笑いを収めて黙り込んだ。金の瞳の中に炎を揺らめかせ、小さく唸る。
 人間の中には、稀に凄い力を持って生まれるものがいる。それは人間として生きる上ではなんら意味などないが、ラズたち悪魔にとっては最高のご馳走のようなものだった。血肉を摂れば格が上がり、交われば魔力が上がる。
 だが所詮、それだけのことだった。そういった人間を見つけた場合、大抵の悪魔はその体を拘束し、その場で食べるかヤリ倒してから食べるかの二択しか取らない。湧き上がる欲情を、肉欲か食欲か区別できないのだ。
 そんな中、ラズはリューを本気で好いていた。一生を一緒に過ごしたいと、結婚まで申し込んだ。
「で、どうなの? まだ名前がないってことは、見つかってないんでしょ?」
 問いかけに、うるる、と喉を鳴らした。
 この獣は、本来悪魔に仕える類の魔獣だ。なんらかの契約によりその身を捧げ、名を付けてもらうことでそれを永遠のものとする。
 それを、これはしようとしない。まだ見たこともない人間を求めて、日夜走り回っているのだ。
 悪魔の中には、時折こういうものが生まれる。悪魔としての邪心が薄く、人への憧れのようなものを抱くものが。そういうものは、大体が生まれたときからその相手を捜す運命を持っている。ラズが、リューを求めたように。
『ひょっとしたら、まだ生まれていないのかもしれんな。声はするが、位置までは掴めない』
「声・・・」
『ああ、お前もあれに呼ばれていたんだろ?』
 ラズは視線を城のほうに移した。今だって、一番近くにリューを感じる。恐らく、向こうも。的確な位置までは分からなくとも、大体の方向くらいならリューも分かるはずだ。
『あの声は、どうしようもなく心を掻き乱す。どこから聞こえているのかも、分からないのにな』
「・・・うん」
 父の張る結界から抜けてしまったあの日、リューに会ったのは偶然かと思っていた。しかし、今ならそうではなかったことが分かる。生まれていたときからずっと呼ばれていた声に、導かれたのだ。
 会ってからは、もうリューのことしか考えられなかった。どんなに魅力的な淫魔に言い寄られたときも、全く反応しない。色欲を司る悪魔としてそれは困ると、父に泣かれかけたことさえある。しかし、あれも人間に身を焦がしたタイプの悪魔だ。正直に話したら、早く捕まえてこいとまで言われた。現金なものだ。
「まあ、頑張って捜してよ。会えたら、連れてきてくれるんでしょ?」
『・・・』
「なんで無言?」
 その後は当たり障りのない話をして、リューの姿が再び現れたのを機に帰ると言い出した。せっかくケーキが出てきたのにと引き止めると、獣はまた口を広げるようにして笑った。
『ケーキなんかよりあの人間のほうが美味そうだからな。俺に浮気させるな』
「なっ・・・!」
 ヒン、と獣は短く笑い、くるりと身を翻してその場から消えた。
 あれはもう魔界との行き来を切断しているはずだから、素早く動いただけだろう。水筒とシール容器を持ったリューが獣の消えた方向を見て、目をぱちくりさせる。
「もう帰っちまったの? 一度ぎゅっとさせてもらおうと思ったのに」
「は? リュー、何言って・・・」
「だってあいつ、ふわふわで気持ち良さそうじゃん。一緒に寝たら温かそうだし」
 皆まで聞く前に、ラズは翼を広げてリューの体を抱き締めた。何か言われるより早く、二人の寝室になっている部屋まで飛び上がる。バルコニーに降りるのももどかしいように広い窓を開き、投げるようにベッドへと押し倒した。両手をシーツに縫い付けて、顔を近付ける。
「どうした、ラズ? 何か嫌な捨て台詞でも吐かれたのか?」
「言ったのはリューだよ! 何? グウは駄目で、なんであんなケダモノは平気なんだ?」
 必死の形相で訊くと、リューはけらけらと笑い出した。手をどかせると、シール容器からシフォンケーキを取り出し、少しちぎってラズの唇に当てた。それを不機嫌な顔で咀嚼するのを見てから、妖艶に笑う。
「ケダモノはお前だろう? それに、俺は猿より犬派だし」
「外見は犬みたいでも、中身は最悪なんだからね・・・」
「はいはい」
 寝た姿勢のままシフォンケーキを何度か放り込まれ、キャラメル風味のそれを嚥下するうちに少しずつ落ち着いてきた。
 最後の一切れを唇に挟み、誘うようにリューが目を動かした。
「ん・・・」
 誘いに乗り、ゆっくりと咀嚼しながらその唇に近付いた。歯が唇に当たると同時にケーキの屑ごと唇を掬い、キャラメル味のキスに酔いしれる。
「・・・ふ、リュー」
「ヤろうぜ。せっかくベッドにいるんだし。ワンワンスタイルで突っ込ませてやるよ」
 舌を絡ませながら、リューはラズの服を脱がせてきた。リードされる流れにたじろぎつつも、両肩に手をかけてキスを深くする。
 先にすっかり裸にされて、くるりと反転するように組み伏せられて喉が鳴った。最近少し伸びてきたとはいえ、まだ身長ではリューのほうが上だ。見上げると、いやらしい笑顔で覗き込んできた。
「なーんか大人しいのな。このままヤっちまうぜ?」
 咬むようにキスをして、その唇を顎に移動させる。首筋を辿り、胸を愛撫して、するすると下半身にまで降りていく。
 ラズの下腹部はもう痛いくらいで、その主張する場所を握り込むと、リューは口角を上げてその先端にキスをした。少し濡れた先をちゅっと吸われ、ラズの腰がびくりと跳ねる。
「ガチガチだな、おい? 俺とあの犬で変な想像でもしたか?」
「っん、なことしたら・・・嫉妬で萎える、よ」
「ほうか?」
 口内に咥え込みながら問われ、ラズは唇を咬んだ。
 色欲の悪魔は、快感に従順だ。元々ヒモとして生きてきたリューのテクはなかなかのもので、日を経るごとにうまく的確になっていく。ころりと玉を指先で弄ばれると、もう駄目だった。
「あっ・・・リュ、ちょっとストップ。お尻こっち向けて」
 爆発する寸前で止めさせ、少しばかり赤く染まった顔で言うと、リューは光る唇をそのままに頷いた。服を脱ぎ、宣言通り犬のように四肢を付ける。ん、と促すように振られ、鼻を押さえた。
「エロいよ、バカ」
「バカってなん・・・っぅん」
 期待でぷくりと膨れ上がった会陰を舌で押すと、リューは四肢に力を入れた。いきなりそこを責められるとは思っていなかったようで、余裕の笑顔を消す。
「ぁん、あ・・・や、そこばっか、すんな」
 皮一枚隔てたところから前立腺を刺激され、腰が揺れる。ちゅうっと強く吸われたのを機に、肘が折れた。
「リュー、約束守って。ワンワンスタイルでさせてくれるんでしょ?」
 高く上げることになった尻をさすられ、リューは唇を震わせながら体勢を戻した。ぺちょりと唾液をなすり付けられても、なんとか耐えた。
「何、いっちょまえに焦らしてんだ・・・早く、入れろ」
「へへ」
 自覚があったのか、ラズはいたずらっぽく笑ってから、窄まっている部分に熱いものを当てた。先走りを塗り込み、糸を引かせたり皺を伸ばしたりして遊んでいる。焦れたリューが腰をくねらすと、当てたまま尻を掴んだ。
「抑えててあげるから、そのまま下がって。自分で入れてみてよ」
「はぁ? お前、何言っ・・・んふっ」
 ちゅぷんと少しだけ挿され、抜かれる。それを何度かされるうちに、逃げるのを追うように腰が下がってきた。それを見て、ラズが喉の奥で笑う。
「欲しい? リュー」
 四肢を踏ん張ったまま、リューはかくかくと頷いた。ずぬ、と少し飲み込んでは腰を止め、苦しさの混じる喘ぎを漏らす。
「ふぁっあっらう、ラズ・・・っ」
 浅い部分のとある場所を通過したとき、リューは舌足らずに名前を呼びながら、だらだらと精液を吐いた。暫く耐えていたがすぐに限界が訪れ、べしゃりとシーツに崩れ落ちる。その背中を、ラズの指がゆっくりとなぞった。
「あ、ああぁ・・・」
「抜けちゃったよ、リュー。頑張って」
 無邪気に言う声に、リューはシーツを掴んで首を振った。涙目でラズを振り仰ぎ、濡れた唇を動かす。
「もうやだ・・・中途半端すぎて、おかしくなる。早く・・・きて」
 言われるなり、ラズはリューの体を反転させた。そして太股を大きく開かせると、一気にその身を貫いた。甲高い声を上げ、急激に訪れた快感から逃げるように腰が捻られる。
「やあぁ・・・あぁっああん! ラズ、ラズぅ・・・イっちゃう・・・」
「ん、ぅく・・・俺も。リューの中、締まる」
 ラズが眉を顰めると、リューはその背中に手を回して掻き抱いた。足を絡めて引き寄せ、結合を強くする。
「だし、中に出して・・・熱いの、いっぱい・・・」
 きゅうきゅうと喰い締めてくる肉を突き広げながら、ラズは口角を上げて頷いた。
「いっぱい、あげる。だからもっと、俺を呼んで」
 両足を抱え上げ、突き破るかというほど激しく抽出した。壊れたようにリューが上げる声を、遠いところで聞く。
 中に大量の精液を叩きつけると、その衝撃と熱さに痙攣しながらまた果てた。その体をうっとりと眺めながら、萎えかけている性器でぐちゃぐちゃと掻き混ぜる。白いものが泡を作って溢れる様が、いやに扇情的だ。
「可愛いね、リュー。俺の・・・」
 ひくひくと動く唇に口付け、ちろりと歯を舐める。その歯が微かに動き、キスに応じた。弱く上げられた手がラズの髪をくしゃくしゃと掻き、唇の周りを舌でなぞる。
「お前も充分可愛いよ。すぐ、妬きやがって」
 えっと顔を赤くするラズから身を引いて、体を起こしながらゆるゆると押し倒す。そして顔を覗き込みながら跨ると、白いものを垂らし続ける場所を、ラズの性器を挟むように押し当てた。
「なんかすげぇ、エロい気分。犯してやるから、覚悟しろよ」
 にんまりと笑い、リューは精液のぬめりを利用してラズの性器を擦り出した。素股の要領と同じ刺激にむくむくと硬さを取り戻すものを、倒したまま前後左右に腰を振りまくる。ラズの口から、掠れた声が漏れた。
「っは、やだ・・・リュ、中に入れて・・・こんなの、酷・・・」
 生殺しだと喘ぐラズを押さえつけ。リューはにやにやするだけだ。早くイケとばかりに、弱い部分を重点的に嬲る。
「ひぅ、う、りゅ・・・リュー!」
 眉を寄せて射精するのを見下ろしながら、リューは久々に感じる征服欲に、三度目の射精を迎えていた。


 日付が変わるかという頃、リューはすっきりした顔でベッドに沈み込んだ。その隣りに、対照的なまでにつまらなそうな顔をしたラズが、少し疲れた様子で横になった。唇を尖らせて、上目遣いでリューを見やる。
「入れたのは俺のほうなのに、なんだか犯された気分・・・」
「あん? だから先に言ったろ、犯すから覚悟しろって」
「そうだけど・・・」
 素股よろしくラズをイカせた後、復活するのを待ってからすぐに跨った。そのまま中で感触を楽しみ、焦れたラズが勝手に動くのを諌めながら好きなように動いた。
 気持ちよかったが主導権を奪われるのは楽しくないらしい。ぶつくさと不満を漏らすラズの、頭を抱えるように引き寄せた。
「だってお前可愛いんだもん。それに俺、元々はタチだし?」
「・・・俺を抱きたいってこと?」
「うんにゃ、別に?」
 入れられるほうが好きだしな、なんて言いながらラズの髪をいじる。子ども扱いに眉を寄せたが、気持ちいいのも嘘ではないので振り払えない。複雑な気分のまま、ラズはリューの背中に腕を回した。
 とくとく、リューの鼓動が聞こえる。そのリズムは、自分のと少しも違わない。心が休まる、と思って目を閉じると、ほぼ同時に穏やかな溜め息が吐かれた。
「なんか落ち着くんだよな、こうしてると」
 すりすりと頭に顔を擦り付け、恥ずかしそうに笑う。
「時々、お前と会えたことは必然だったんじゃないかって思うよ。ネコをやるなんて想像もしてなかったけど、お前と一緒になるのは、前から決められていたみたいな・・・」
 眠いのか、語尾に欠伸が混じった。
「いいよな、凄く・・・俺、お前が・・・」
「リュー」
「ん? わり・・・ねむ、」
 髪を引いていた手が止まったかと思うと、リューは既に寝息を立てていた。その腕の中から一旦抜け出し、毛布を下から引きずる。
 抱き込むように毛布に包み、こつんと頭をぶつけて目を閉じる。胸が、苦しかった。
「リュー、俺も。俺も、リューと会えたことは奇跡でも偶然でもないと思ってるよ。きっと、生まれる前から決まってたんだ」
 さらりと髪を分け、穏やかな寝顔にキスをする。
「俺はずっと、リューだけを考えてた。会う前も、会ってからも」
 耳に髪をかけながらもう一度口付けると、小さく唸りながらすり寄ってきた。その体をきゅっと抱き締め、喜びに胸を震わせる。
 自分は幸せだ、と今日再確認した。生まれてからわずかの年月を待っただけで、ラズはリューに会えたのだから。まだ顔も知らない相手を捜すあの獣より、それがどれだけ幸福なことなのか。
 この幸運を、自分は一体誰に感謝すればいいのか。神でないことだけは、一番に分かるのだが。
「・・・好きだよ、リュー」
 真夜村に生を受けてくれたことを、感謝しよう。この想いを、受け入れてくれたことも。
「愛してる」
 誰よりも、何よりも。それこそ、他の何とも比べ物にならないくらい。
「愛してる・・・俺の、花嫁」
 呟く告白に、腕の中の花嫁が静かに微笑んだ。
 ような、気がした。






終。
08.12.13up。


25000リク小説でした。haru様のみお持ち帰り可です☆